文化庁より「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討まとめ)」が発表されました
「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)」が文化庁より公表されました。以下のリンクよりご参照ください。
文化庁「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)」を公表します
このガイドラインにおいて「取引の適正化の促進等の観点から契約において明確にすべき事項等」として、「(4)安全・衛生」の項目に「発注者は受注者の安全に配慮、事故・ハラスメント防止のため責任体制を確立」することが明記されました。
a4cの前身団体である映画監督有志の会では本年3月24日、ガイドラインの作成に当たっていた「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」に対し、「文化庁発出の契約書の雛型にハラスメント防止策を組み込むことを十分に議論し検討することを要望します」といった内容の要望書を文化庁長官宛に提出を行いました。
・「映画監督有志の会」がハラスメント防止に向けての要望書を提出
昨今のハラスメント問題への危機意識の高まりを背景に、私たち有志の会に限らず、複数の文化団体から文化庁に対し省庁要請が行われ、また5月23日から6月13日という短かい意見提出期間だったにも関わらず141通に及ぶ多数のパブリックコメントが文化庁に寄せられました。そういった切実な市井の声に応える形で、当初は危ぶまれていたハラスメントについての言及が明記されたことを、まだまだ課題の残る内容ではあるものの、当会としては一定の評価をします。また、議論にあたった検討会議委員の尽力に御礼申し上げます。
今回、文化庁から契約書ガイドラインが公表されたことは、映画映像業界の6割以上が「契約書を交わしていない」という厳しい実情(経産省調べ)の改善の一助になることと思います。
映画業界関係者、特に現場責任者は、文化庁発出のガイドラインに「事故・ハラスメント防止のため責任体制を確立」と盛り込まれたことの意味を重く受け止めなくてはなりませんが、一方で、このガイドラインには拘束力があるわけではなく、「改善の一助」にはなったとしても、今のままでは大きな改革に繋がることは現実的に難しいでしょう。また、ハラスメントに対し、何を行えば「必要な配慮」をしたことになるのかまだ不明瞭であり、業界全体が早急に「ハラスメント防止ガイドライン」を取りまとめ共有していく必要があります(a4cの作成したハラスメント防止ガイドラインの草案はこちらになります)。
この一歩を無駄にすることなく、今後どうすれば受注側が一方的な不利益を被ることなく発注側と適正な契約書を交わすことが業界のスタンダードになるのか、引き続き取り組んでいく必要があります。韓国では適正に定められた「標準契約書」が交わされていることで助成金給付がより有利になるなどの施策が取られています。これは一例ですが、a4cとしては今後も国内や各国の先行事例のよき部分を研究し取り入れながら、改善のための提言を重ねていきます。
この取り組みは、未来にあるべき日本版CNCが担う支援の4つの柱、①「 教育支援」②「労働環境保全」③「製作支援」④「流通支援」のうち、②「労働環境保全」の実践と提案にあたります。
「action4cinema / 日本版CNC設立を求める会」
是枝裕和、諏訪敦彦、内山拓也、四宮隆史、岨手由貴子、西川美和、深田晃司、舩橋淳
3月24日の省庁要請の様子。
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