「映画戦略企画委員会」レポート ~第2回会議事録公開~

映画戦略企画委員会
映画監督有志 2025.04.16
誰でも

 2月13日、コンテンツ産業官民協議会・映画戦略企画委員会の第2回会議が合同で開催され、議事録が公開されました。以下より記録を閲覧できます。

議事次第配布資料議事要旨

 24年9月9日、岸田内閣下で第1回会議が開催、政権交代を経て、石破内閣下でも取り組みは継続されることとなりました。

 会議の第1回からの経緯と現在地については、こちらのレポートに詳しくまとまっています。
 https://branc.jp/article/2025/02/25/1458.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_content=tweet

 この会議体の大きな目標の一つに縦割り行政の解消がありますが、縦割り行政の弊害として支援の全容が誰にも把握できていないことや海外との協力連携における窓口がないなどが挙げられます。上述の「映画戦略企画会議」議事録要旨に目を通すと、まずは文化庁、経済産業省、総務省、それぞれの担当者から映像・映画分野への支援についての報告がなされ、ただそれだけのことではあっても、長く続く縦割り行政打破の素地となるべき会議の価値を実感させます。実際、三省庁からの報告を受け、奈須野内閣府知的財産戦略推進事務局長は「今日各省から御紹介した取組に関して、これを基軸にしながら支援メニューの見える化に向けて政府全体として取組を進めていきたい」と発言。こういった一言一言が公文書に蓄積される意義は大きいと言えるでしょう。

 アニメーション・映画監督の庵野秀明委員は、アニメーション、漫画、特撮、ゲーム分野におけるアーカイブ実現のための産官学の連携を要請、また人材育成の現場の切迫感が伝えられ、是枝裕和委員からはクリエイター支援基金の受け皿となる芸文振や文化庁・経産省の両省庁の施策の統合に関する質問、現場スタッフのマネージャーを務める近藤香南子委員からは映画適正化機構発足後にもなお残る労働問題について、俳優の大沢たかお委員からは若い俳優、スタッフの困窮した状況などが伝えられました。
 行政における文化支援の抱える問題のひとつに、作り手のリアルと制度設計が噛み合っていないゆえの利用しづらさ、必要なところに支援が届かない効率の悪さがありますが、「映画戦略企画委員会」の存在が今後その溝を埋めていくことを期待します。その点で言えば、まだまだ会議出席者が幅広い業種を包括できていないこと、ジェンダーバランスが男性に偏重していることなど課題は多いと言えます。
 他、各委員からの発言についても、ぜひ議事録からご一読ください。

 映画戦略企画委員会の発足は、私たちが危機感を持って求め続ける、フランスにおけるCNC(国立映画映像センター)、韓国におけるKOFIC(韓国映画振興委員)と同等の機能を持つ映画映像分野の統括機関につながるものとして大きな期待を寄せていますが、その道筋は決して容易ではありません。
 第二回会議において映像産業振興機構専務理事の市井三衛委員も指摘するように、表現分野、ジャンル毎に作り方や抱える問題は異なるなかで映画映像に特化した戦略企画委員会の会議とコンテンツ産業官民協議会の会議が合同で開催されていることが果たして効率的なのか、また政権交代を挟んだ事情はありつつも、第一回と第二回の会議の間に5ヶ月も空いてしまったスピード感の欠如には懸念が残ります。コロナ禍以降、今なお大きなダメージを抱える韓国映画界は、KOFIC主導により宝くじを財源とした支援金の確保や米ネットフリックスとの連携などの対策を打ち出しています。そういったスピード感もまた統括機関があるゆえであることは間違いありません。
 また、現在の会議の議論はどうしても行政からの公助の改善、拡充に偏りがちですが、併せて映画業界における自律的な自助の仕組みの必要性についても継続して議論していかなくてはなりません。
 映画戦略企画委員会が日本における映画・映像分野の改革の礎となれるか、引き続き提言とともに注視していきます。

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